289832 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

勝手に最遊記

勝手に最遊記

A Rose Prison ―11―

「三蔵ぉ~っ!!」
悟空が扉を蹴破った。

「野蛮な人達ですね・・・やはり、貴方が一緒に居るべきじゃない。」

「聚楓っ!?・・・三蔵っ!!」

部屋の奥に、薔薇で体の自由を奪われ、磔にされている三蔵と
妖しく微笑んでいる聚楓の姿が見えた。

「・・コレは、どう言う事なんですか?」
目の前にいる沁紗を見つめながら、八戒が言った。

「三蔵様は、ご主人様と永遠にこの館で暮らすのです。
薔薇を愛でながら・・・。どうか、このまま大人しくお引き取り下さい。」

「ハイ、そーですかってワケにはいかねーのよ、オジョーさん。」
油断無く、沁紗を見ながら悟浄が牽制する。
『妖怪?・・ってワケじゃなそーだけど・・マジ、ヤバイって。』

「三蔵を返せよっ!なんで三蔵がココに居なきゃダメなんだよっ!?」
悟空が如意棒を具現化させる。

「・・・本当に野蛮な人達ね。あの三蔵様は、美しく高貴なお方。
私のご主人様と一緒にいるのが相応しいのよ。あなた方のような下品で、野蛮な人達とは違うわ。
正に、薔薇のようなお方・・「あっはっはっはっはっ!!」

場違いな笑い声に、沁紗が呆気にとられる。

「さっ・・三蔵が、美しく・・高貴ぃ!?」
桃花がゲラゲラと笑う。
「あの鬼畜生臭坊主がっ!!?」悟浄も吹き出す。
「・・・薔薇っ・・薔薇だってさっ!!」
悟空が床をバンバン踏みながら、笑う。
「薔薇と言うより・・・“棘だけ”のような気がしますけどねぇ。」
にこやかに毒舌を吐く。

『・・・アイツらぁ・・・』
怒りの余り、朦朧としていた意識が覚醒してくる三蔵。

涙を流しながら、笑い続ける桃花達に
「おっ・・お止めなさいっ!三蔵様を侮辱することは許しません!」
と、叫んだ。

「侮辱~?本当の事だっつーの。」悟浄が後ろ手に錫杖を具現化する。
「夢見ンのは勝手だけどさ~。巻き込まないで欲しいよなー。」
悟空が如意棒を構える。
「そーそー!坊主のクセに、飲酒・喫煙・博打・暴力・・何でもござれよ?
しかも無闇に発砲するわ、可愛いあたしにハリセン喰らわせるわ・・。」

「誰がっ・・・可愛い・・・んだよっ!」
必死に顔を上げて、ツッコミを入れる三蔵。

「ホラね?殊勝な男性じゃありませんから・・此処に置いていても、
迷惑になりますよ?」八戒が一歩前に出て、
「ですから・・・三蔵を此方に返して頂きます。」
沁紗に詰め寄った。


「・・・沁紗。その方達に、ピアノを弾いて上げなさい。」
微笑みを崩すことなく、聚楓が沁紗に言った。

「ハァ?ナニ言ってンの、お前・・・。」悟浄が呆れたように言う。

それに構うことなく、
「ハイ、ご主人様。」沁紗が八戒達へ、左右の腕を真っ直ぐ伸ばす。

「・・どうぞ、ご堪能下さい。」沁紗の眼が、緑色に変化した。

瞬間、ズゾオオォォッ――――沁紗の白い腕が、太い緑の蔦へと変わり―――――

もの凄い勢いで、八戒達に巻き付く。

「っっつあっ・・!!」
蔦から生えている棘が、体中を蝕み、血を噴き出させる。

「・・・良い肥料、になれるんですから・・・幸せですね。」
聚楓が笑った。


© Rakuten Group, Inc.
X